『ヨーロッパのはずれの島と、象の顔の形をした大きな大陸の歴史(2)』ジュリアス・スージーさんの日記

レビュアーのカバー画像

Eat for health,performance and esthetic

メッセージを送る

ジュリアス・スージー (男性・東京都)

日記詳細

マルコ・ポーロ、そしてペロ・ダ・コヴィーリャ、ヴァスコ・ダ・ガマ







ヴェネチアの商人の息子マルコ・ポーロは、
1298年に、17歳の少年が、中国にわたって、
フビライ・ハーンのお気に入りとなって、
以後17年のあいだフビライに仕え、
揚州の知事にまでなった物語を、
断片を連ねる形で書いた。
一般にそういうふうに知られている。
そう、『東方見聞録』であり、
それは、多くのヨーロッパ人に、見果てぬ国への夢をかきたてた。
イタリアではこの本は、『イル・ミリオーネ』("Il Milione"-百万)というタイトルで知られ、
マルコ・ポーロがアジアで見た物を数えるとき、
いつも「100万と言った」(らしい)ことに由来するそうな。
タイトルが奇妙でいい。
ただし、マルコ・ポールの人生が、本に書かれたとおりであるかどうかは、怪しいらしい。
本人は中国の土を踏んでいなくて、
商人たちから又聞きで仕入れた知識の断片を集めたのではないか、
という疑いが持たれている。
とはいえ、ヨーロッパ人の胸に、
アジアへの憧れをかきたてた最初の本の出自が怪しい、
というのは、ぼくにはむしろ魅力的におもえる。
そもそも当時、ヨーロッパとアジアのあいだに貿易があったことがわかる。
モノの行き来があれば、その向こうにどんな国があるか、誰だって夢想するだろう。





ところが1300年代、オスマン・トルコが帝国として誕生すると、
かれらが貿易を独占し、それらの品々が手に入らなくなった。
そこでヨーロッパの王様たちは、
ますますアフリカ大陸南端の喜望峰海路に野望を託したのだった、
喜望峰の向こうは、もうアジアであるらしかったから。







1487年、ポルトガルのジョアン二世は、
ポルトガルのユダヤ人ペロ・ダ・コヴィーリャに命を与えた、
「遥かアジアの地で、ムスリムに囲まれ、
われわれを待っている司祭ヨハネ(プレスター・ジョン)を見つけ出せ。
そしてまた、シナモンと他のスパイスを見つけ、
南アフリカ、喜望峰まわりのインドへの道を完成させるのだ。」
それを受けて、ペロ・ダ・コヴィーリャは、
アフリカ西海岸沿いを進み、喜望峰をまわり、
モザンビークを経て、そして(現在のケーララ州)カリカットへ到着した。
プレスター・ジョンこそ見つけられなかったものの、
大量の胡椒を手に入れ、その後、カイロでポルトガル王の使者に、
大量の胡椒と、航海記録をわたした。
そこには、「インドへはアフリカのギニアから海岸をつたって航海できる」と
書かれていたそうな。
そしてその4年後、同じくポルトガル人のヴァスコ・ダ・ガマが、
4隻の大型船で、同じくカリカットへ到着し、
なるほど、ペロ・ダ・コヴィーリャの言うとおりだ、
こりゃ、おいしい話だ、と不敵に微笑んだ。





そのとき、ヨーロッパとインドは通じ合った。
そしてスペインは南米から略奪し、
ポルトガルはアジアおよびアフリカを収奪する、
そんな役割分担が生まれた。
そしてその後を、ネーデルランド、イングランド、フランスが追い上げる。
そんな構図が生まれてゆく。
ヨーロッパ各国は、銀の獲得競争に夢中になった。
なお、ネーデルランドとイングランドのみがプロテスタントで、
ほかの国々はすべてローマカトリックであるところも見所だ。





1510年、ポルトガルは、インド総督アルブケルケを送り、
ゴアを本拠地に、翌年、早々とマラッカに進出し、インドネシア諸島を押さえ、
インド洋からインドネシア諸島までの利権を握った。





商売って、安く買って、高く売るもの。
むかしもいまもかわりはないけれど。
ただし、大航海時代は海賊商売、
この原則が、あからさまにたけだけしく生きている。
とんでもない時代がはじまった。
コロンブスがアメリカ大陸を発見してからというもの、
スペインは、海図に磁石を携えて、砲丸打ち出す大砲のっけて、
三本マストに帆を張った木造キャラック船(Carrack)や、
カラベラ船(Caravel)に、乗りこんで。
鉄製の鎧に身を固め、メキシコとペルーを侵略し。
原住民を奴隷にして、銀を掘削し。
お宝船でスペインに帰還する。
これを何度となく繰り返すようになった。
こんなボロい話はない、
武装して海の彼方へ行けば、銀がざくざく手に入る。





とはいえ、カネはかかるので、
一回ごとの航海に、出資者を集めて、
航海が終われば配当を払う仕組が導入される。
ただし、リスクは高く、
もしも航海が成功すればボロ儲けでウハウハながら、
しかし失敗すれば、船が沈没、乗組員全員が死んでしまうとか、
現地で、行方不明になったり、なにが起こるか、わからない。
もちろん出資者の投資も返ってこない。
それでもなお、こんなうまい話をスペイン人だけに独占させておくわけにはいかない。
こうしてヨーロッパは、新時代を迎えた、
悪党列伝の新時代を。






他方、インド大陸に暮らしていたさまざまな部族たちにとっては、
三本マストの帆を張った木造の船でやってくる、白い肌の蛮族たちに、
ただただ翻弄される、そんな時代が始まったのだった。








つづく → http://www.doom.now.cc/rvwr/000436613/diarydtl/51324/
目次 https://www.doom.now.cc/rvwr/000436613/diarydtl/161891/
ページの先頭へ