「じゃ、ベンツ鍋にしましょ」と、むらむらさんが言った。
ぼくは訊ねた、「ベンツ鍋?」
むらむらさんは言った、「火鍋なんですよ、鍋の形がね、ベンツのマークのように三つに分かれていて、”マーラー味””トンコツ味””タイカレー”の三つのスープで食べるんですよ。」
おれは言った、「ほぉ・・・おいしそうじゃないですか!」
そしてわれわれは火鍋の名店「温帝呉」へ。
これがまたおしゃれな店なんだ、テーブルは黒、椅子はオレンジ、壁面はオリーヴグリーンとレモン・イエロウとホワイトで、(いわばマッキントッシュ・カラーで)構成されていて、クールなんだ。そこで、火鍋をいただく。
スープが”マーラー味””トンコツ味””タイカレー”の三つというのもなかなかおもしろい。
マーラー味に、豚の血豆腐(シエ・ドーフ)、キクラゲ、海老団子、ぜんまいなどを入れて食べる。
タイ風味のカレースープがまたいい感じ。スパイスの辛さ、レモングラスの酸味、ココナツミルクの甘みが一体となった濃厚な味わい。薄切りの肉によく合う。
トンコツスープもまた濃すぎず薄すぎずなかなかコクのある味わいだ。
北京のレストランはプレゼンテーション上手だ、火鍋のような伝統料理を、ちゃんといまっぽくクールにプレゼンテーションしてゆく。伝統を活かしながら、現在の演出をほどこしてゆく。おもえば、むかし火鍋は陰陽マーク(円にサインカーヴの2層鍋)で作って食べたものだった。陰陽鍋からベンツ鍋へ。まるで中国の経済発展そのものだ! ただし、ちょっと話がうますぎるな、これじゃまるでネタみたいじゃないか。
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