かわいいスウェニィ。
ぼくは通りの向こうに定食屋を見つけ、入ってみた。
開け放たれたドア、薄暗い店内、
喩えるならば、田舎のお好み焼き屋という感じだ。
ぼくは合掌して言った、Vanakkam!
主人も合掌して言った、Vanakkam!
ぼくは言った、Meals,OK?
主人は言った、No,finishd.Now,only Masala dosai, Parota,Korma.
残念。もうティファンの時間なのか。
ミールスは昼定食でどこの店も提供する時間はお昼時だけで、とても短い。
うかうかしていると食べ逃してしまう。
逆に言えば、ティファン(軽食)ならば、朝も午後も食べられる。
気がつくと、ぼくの座った椅子の右手、
逆光のなか、ちいさな人が立っていた。
その人はしばらくぼくの脇に佇んだ後、
ぼくの正面に座った。
女の子だった、2テールに髪を結んでいる。
食堂の娘らしい。
ぼくは合掌して言った、Vanakkam!
彼女も合掌して言った、Vanakkam!
かわいい顔とダミ声がアンバランスで、いい。
けれども、残念ながら後が続かない。
ぼくは彼女に言った、I'm Japani.I'm from Japan.
すると彼女は両手を水平の広げて言った、Plane?
ぼくは言った、Yes,I'm from Japan by plane.
ぼくは自分の名前を言い、そして言った、Call me Suzzy.
彼女は言った、My name is Sweny.
ぼくはいたずらっぽく笑いながら言った、
sixteen,seventeen,eighteen,nineteen,
Sweny!!!
スウェニィは、うれしそうに笑った。
折りたたまれた地図を広げると、
テーブルの上で、山折谷折になった。
ぼくはその大きな地図をテーブルのこちら側から、
スウェニィは向こう側から眺める。
スウェニィは、地図の脇の写真を指して言う、
ハイコート(最高裁判所)!
(ね、ね、知ってる? うちのそばだよ! という感じで。)
次にスウェニィは、ヒンドゥーの神々が彫り込まれた寺院の門の
写真を指して言った、ゴイル!
もしかしてgargoyle のことか?
スウェニィのしゃべるたんじゅんな言葉は、
ぼくをよろこばせた。
あなたはスージー、日本からやって来た。
飛行機に乗って。
わたしの住むこの街には、ハイコートとゴイルがある。
そんな会話を愉しんでいたら、
彼女の母親が帰って来たようだ。
彼女はスウェニィを見て、囃したてた。
あらあら、あなたもう色気づいちゃって。
ごめんなさいね、ラヴァーボーイとデート中だったのね。
スウェニィは顔を真っ赤にして怒る、怒る。
違うってば、ぜんぜん違うから、そんなんじゃないもん。
そういうニュアンスは言葉がわからなくても伝わるものだ。
ぼくは言うべきユーモラスな言葉も見つけられず、
うつむいて、マサラドーサに齧りついた。
つづく →
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