季節を迷走した東京の初雪は奇しくも桜の開花宣言と重なる。
開いたピンクの一輪、二輪に冷たい白い雫が落ちて季節の二重奏を奏でている。
開花から四日を経過した仕事帰りの夕刻に洗足池に足を運ぶが桜はまだである。
春分の日、再び洗足池を訪れる。
池に垂れ込む桜の枝を前にしたベンチに腰を降ろしてカップ酒を開ける。
角のように分岐した5,6本の長い幹から更に伸びた数々の細い枝は交錯して厳密に計算されたように網目を創りながら水面を這って、開いたばかりの小さな花と蕾がその網目を飾り、網目の向こうに写る池はあたかも花と蕾が柔らかな陽を受けて浮かんでいるように見える。
水面では人馴れした鯉が大きな口をパクパクと開き餌をねだる。
そしてさっきまで白い羽で字を描く様に優雅に空を飛び回っていた水鳥たちが水面にゆったりと腰を据えて気の向くままに水面を滑っている。
桜が織り成す風景を賛美するしかない。
移ろい行く季節そしてこの瞬間に祝杯をしよう。
祈りを込めてカップの酒を舐める。
このすべての地上に希望あれ。。