『ある少年』sequenceさんの日記

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巷談「安酒、気楽酒、色気酒」

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「あいつんち金持ちなんだよ!!」
60年近く前の小供どうしの会話である。
その逆もあった。
「あいつんち貧乏なんだよ!!」
その貧乏な子は給食に苺が出た時に「いちごがでたぞ、いちごがでるぞ!!」とラインダンスを組んで嬉しそうに床の上を跳ねていた。ちいさな苺はくたびれたアルミの器に三つだけ入っていた。
その少年は楽しく愉快でもあったが突如態度が急変することもあった。
晩秋の夕刻、公園から帰り道、そろそろ暗くなり始めていたので急ぎ足だった。
「いそいで歩けよ!!」と急に声を荒げて年下の男の子の頬を往復ビンタした。
頬からピンピンと乾いた音が響きその子は大粒の涙を流し大声で泣き出した。
僕は暴力の光景を間近に見たことがなかったので衝撃を受けた。
歩きながらの泣き声が続く。
「うるせぇ!!いつまで泣いてやがるんだ」
今度は道端に落ちているぼろ切れを拾ってはその子の口の中にねじ込んだ。
口と顔を歪めて苦しがる年下の少年の表情に可愛そうだなと思いつつもその反面、妙な扇情的な気持ちに陥ったことも事実であった。

一、二週間が経過してまた同じ顔合わせで遊ぶことになる。
その少年は年下の子と笑顔で楽しく遊んでいる。年下の子もこの前の出来事を忘れたように笑顔である。何事も起こらずに平和的に時間が流れて行く。
僕は平和的な時間に不満を覚え、暴力がもたらす諧謔的な光景の再現を望んだ。
「ねぇ、この前やったみたいに虐めてみてよ」小声で少年の耳元に囁く。
僕が小声で何かをしゃべっている事に気が付いた年下の子は僕らに近づいてきて「ねぇ、今、何しゃべったの」と問う。
少年は言う。
「今ね、こいつが君のこと殴ってみてって言ったんだ。でもぼく仲良しの○○君にそんなことできやしないよ。。」と甘ったるく芝居のように言う。
この間のビンタはなんだったのだろう。
少年は蔑むように僕を見る。
年下の子は冷たく僕を見る。





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