虫取りも楽しい遊びであった。狙いはカブトムシ、クワガタである。
早朝の4時頃に山の上にある小学校へ行く。まだ日が明けぬ暗闇の山道は何とも言えない恐怖感がある。懐中電灯で夜道を照らせば前方に小さな人影がぽーっと浮かぶ。背中には桶を背負って腰を屈めながら同じように山へと上っている。
その姿に一瞬、ぞーっとするがよくよく見れば山の畑へ仕事に往く土地のお婆さんである。
学校の山の校庭には桜の樹と並ぶように7mほどの水銀灯が日本海を見下ろすように立っている。水銀灯の光に虫が集まるのである。
虫かご、懐中電灯の紐をたすき掛けにして水銀灯を登る。てっぺんには子供が3人ほど座れる囲い台がある。下を見ないようにサル梯子をゆっくりと上るが高くなればなるほど心臓が高鳴り足が震える。。囲いの上になんとかたどり着く。光に寄せられたカブトムシ、クワガタを見つけ出しては虫かごに放りこむ。少年と秀ちゃんの虫かごは大収穫となる。目の先はイカ釣り船の電球の灯火が間隔をおきながら暗闇に浮かび上がっている。
そして5時前には太陽がゆっくりと表われ海の景色が徐々にはっきりとした姿を現し青い絨毯の海が何処までも延びて拡がっていく。。
「ちょっとお腹が痛くなってきたよ」秀ちゃんが照れくさそうに水銀灯のてっぺんで言う。
「どうしたの?」
「昨日、寝る前にスイカ食べ過ぎたみたい」
お婆ちゃんが昨日の夜、畑で取れたスイカを出してくれた。秀ちゃん美味しそうにバクバクと食べていた。
「もうだめだ」ニヤッと笑って半ズボンを下げる。囲いの手摺りを両手で掴み、日に焼けた背中とは対照的な真っ白なお尻を剥き出し、お尻だけを真下に向けてウンチを放った。ブリブリの音とともに液体状のウンチが真っ白なお尻から地上に向かって勢いよく落ちて行く。
「桜の葉っぱ取ってくれない」
「わかった」
3、4枚の青葉を渡すと左腕だけで体を支え、右手に持った桜の葉っぱでお尻の穴の付近を拭いている。
サル梯子で下に降りると水っぽい薄桃色の汚物の中にスイカの種が混じっていた。
捕まえて来た虫は村の子供たちと混じって戦い合わせる。虫の力比べである。カブトムシとクワガタの対決は見所がある。少年は平クワガタをかごの中から取り出す。村の子は大きなカブトムシを得意そうに掴み上げる。両者を向かい合わせて戦闘態勢を整える。少年のクワガタはのこぎりの刃を大きく広げカブトの胴を挟み込む。カブトも負けじと角を駆使しクワガタを打っちゃりの要領で投げ返す。お互いが致命傷を受ける前に引き離す。その時、少年のかごを指さしながら村の子の一人が
「おーい、カブト、ベッチョしてる」
ベッチョとは方言で女性器及び男女の接合を意味する。少年がかごを覗くと雄は胴の後部から突起物を出し雌の上に覆いかぶさり胴の後部を揺すっている。
少年は恥ずかしさと雌雄合体の姿に薄気味悪さを感じ、かごに手を入れ交尾中の雄を引き離して思い切り壁に叩きつけた。
雄カブトはあっけなく潰れてしまい、歪んだ崩れた胴からは粘性を帯びた液を滲み出して絶命する。
村の子ども達は少年の暴挙に目を丸くしていたがやがてげらげら笑い始めた。少年は内心可愛そうなことをしたと思ったが初めて目にするカブトの交合の姿をどうしても許すことが出来なかった。