夏はクチナシ、秋は金木犀、そして春は沈丁花の香が好きである。
時を大きく遡れば16、17歳の春休みに入る頃、3月の中旬辺りが沈丁花の香の旬であった。。
時が進んで桜の開花は3月の下旬、早い時は中旬とその時季が年々と早まる。
沈丁花も見習うように2月の中旬から下旬にそのうぶなピンク色を妖しく開いてその香とともに性の幻惑をまき散らかす。
そして思春期は沈丁花にそこはかとなく女性を感じたものである。
暖冬の散歩道にはや、沈丁花が開いている。
開いたピンクに期待を込めて鼻を近づけてみる。
老いた鼻はそこはかとない女性を感じることが出来ない。
目が衰え、歯が衰え、匂いにさえも疎くなっている。
その昔、夏はクチナシ、秋は金木犀、そして春は沈丁花の香が好きであった。