レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!
1位
1回
2018/11訪問 2018/11/07
11月3日「酒文化の日」と命名したこの日、今年もまた日頃親交のある方々とご一緒して会を催すこととなりました。今回のセッティングをつかさどるのはSG325さん、宴席には岐阜市「そば くら富」が選ばれました。SGさんは、希少在来種の玄蕎麦を扱うこの店が大層お気に入りで、このところ足しげく通っておられます。店主も私たちの集いを意気に感じていただいたのか、最高の蕎麦と料理を楽しんでほしいとのこと。期待が高まります。当日は昼のピークを避けて、遅い時間に予約を入れました。四人がカウンターに迎えられ、いよいよ宴の始まりです。
まずは蕎麦前の手筈に日本酒の品定め。店主お勧めの酒を四種ご用意いただきました。新潟の緑川、岐阜の小左衛門、山形の圓(まどか)、そして洌。とりわけ洌には店主の思い入れがあるようです。酒を選び終わったところで、すかさず蕎麦味噌が用意されます。香ばしい風味にたちまち惹き込まれてしまいました。続いて、追い打ちをかけるように蕎麦豆腐。からすみと山葵をあしらい、ムース仕立ての甘汁に包まれた一品です。蕎麦の店を超えた味わいは「まるで蕎麦屋に来たみたい・・」という冗談が飛び出すほどでした。でもそれは、ほんの序章に過ぎなかったのです。
バーナーで鴨を炙って、前菜の盛合せが提供されました。鴨ロース、そばがきのパテ、サーモンの低温コンフィ、車海老の蕎麦寿司。いずれも最高の蕎麦前を演出しています。とりわけ鴨とサーモンが飛び抜けていました。これまで出会ったことのない美味しさに誰もが驚きます。カギとなるのは低温調理の技法。研究熱心な店主は、調理の工程を詳しく科学的に解説してくれました。選りすぐりの食材を用いて手間暇を惜しむことなく、最高の状態で提供されているのがよく分かります。料理に対して真摯に向き合う姿に一途な想いを感じました。
蕎麦前で存分に圧倒されたところで、いよいよ蕎麦の登場です。ご用意いただいたのは三種の在来種。手始めのスプラウト(乗鞍在来種・発芽蕎麦)は芳香豊かで野趣に富む味わい。続く日和田粗挽きは細切りながらしっかりした歯ざわり。これは焼き塩でいただきました。しんがりのピンネ牡丹蕎麦は幻の蕎麦とも呼ばれるそうです。もはや美味いという言葉しか出ません。それぞれ、いとおしく味わった後は、さらにかけ蕎麦を追加することになりました。予定外の注文にも快く応じていただき、供されたかけ蕎麦はおもわず絶句してしまう美味しさです。かけなのにシャキッとした蕎麦。出汁が香り立つ甘汁。すべて余すところなくいただくと、染み渡る滋味に身も心も満たされる思いでした。
これまで、蕎麦の店の味わいというのはある種の予定調和だと思い込んでいましたが、その考えはすっかり覆されてしまいました。これも店主の技量によるものです。蕎麦の奥深さや蕎麦店の可能性を、かくも鮮やかに見せられるとは思ってもみませんでした。最高レベルの秀でた味を築き上げながら、なおも高みに向かって突き進むこの店からは目が離せません。今から次の訪問が楽しみです。この、素晴らしい機会を設けていただいたSG325さんにも感謝を申し上げます。
2位
1回
2018/01訪問 2018/01/25
名古屋で蕎麦の店といえば、筆頭は池下の「縁」だと、那古野・鈴音のご店主からお聞きしていました。蕎麦屋が推奨する蕎麦屋とはどれほどのものかと興味深く思いましたが、惹かれながらもそのままになっておりました。そうこうするうち、マイレビのSG325さんが続けざまにお出掛けになり、たいそう気に入られたようです。先を越されたなと思っていたら、そのSGさんからお誘いのご連絡をいただきました。渡りに船のこの機会、ふたつ返事でご一緒させていただくことにいたしました。
昨年はSGさんにご一緒して鰻の蘊蓄をご教示いただきましたが、蕎麦にもまた一家言お持ちの方ゆえ、今日はどんな教えをいただけるのか期待が高まります。地下鉄池下駅で落ち合い、10分ほど歩いて店に到着しました。
店内はカウンターと二人掛けのテーブル席がふたつ。蕎麦屋というより、品の良い割烹の店構えです。奥のテーブルに通していただき、まずは盃とお酒を選びました。お通しは鞍掛豆と煮蛸、桃蕪の三種。柔らかな蛸が絶妙の味わいです。続いて、SGさんお薦めの牛たんつくね、大ぶりな焼椎茸、表面がカリッとした厚揚げ豆腐。シンプルな一皿にも、ひと手間が掛けられているのを感じます。お酒もほどよくいただいて、心地よくなったところで、いよいよ蕎麦の登場です。
初めて伺う私はせいろを、今回が三回目の訪問となるSGさんはかけを注文しました。提供された蕎麦は綺麗に切り揃えられています。表情は微粉でなめらかですが、口当たりは十割と思えないほどにしっかりしていました。辛汁はきわめて調和がとれており、何ひとつ過不足を感じさせません。この感覚は、以前、中津川のわくりで受けた印象に似ています。SGさんのかけ蕎麦も少しだけお相伴にあずかりました。驚いたことに、温蕎麦であっても、しっかりした口当たりは保たれています。甘汁に至っては、過去に感じたことのない美味しさだといっても過言ではありません。
いろんな場面で、この店の凄さに目を見張る思いがいたしました。鈴音のご店主の言は間違いありません。SGさんが足繁く通う理由にも納得できます。お二人には今回の場を導いていただき感謝いたします。私の知る蕎麦店のなかでは、まさに図抜けていると言えるこちらのお店、もう少し通わせていただこうと思います。
実のところ2018年はレビューも休みがちでしたし、実際に出向いた店も決して多くありませんでしたが、
ここに挙げたふたつの蕎麦店には飛び抜けて素晴らしいクオリティを感じました。
とりわけ、岐阜の蕎麦 くら富はこれまで蕎麦店に抱いていたイメージを突き抜ける存在であったと思います。
まだ若く、この道の経験年数もそれほど多くないご店主ですが、とにかく研究熱心です。
そして、元々携わっていたイタリアンで培った技術も巧みに取り入れていらっしゃると感じます。
今後まだまだ大きな伸びしろを秘めていらっしゃる点でも、間違いなくこの1年のNo.1といってよいでしょう。
千種区振甫町・縁は、今さらここで取り上げるまでもなく、名古屋最高峰の蕎麦店として地位を確立しています。
ご店主は元和食の調理人というだけあって、繊細かつ完成度の高い仕事をなさっています。
蕎麦のよさは言うに及ばず、店の雰囲気やホスピタリティを含め、名古屋では他に類を見ない一流蕎麦店です。
唯一、気懸りなのはご店主のお身体。大事にしていただいて、末永く美味しい蕎麦を楽しませていただきたいです。
さて、新たな年が明けてました。今年はどんな出会いがあるのか、とても楽しみです。