奇病 序章
自分の異変に気が付いたのは最近だった。
どうも?
寝床から起き上がると、廻りの様子が、変化してる?。
今は、妻と二人だけで、この古くて広い家に住んでいる、子供達は独立して同居はしていない
ガランとした家に家内と犬1匹で暮らしている。
家内は無類の犬好きで、室内犬のコーギーを飼って、ベッドの中にまで犬を誘い入れて、一緒に寝ている。
あんな、犬の毛が散乱して獣臭のする部屋では住めたものではない。
私は玄関横の小部屋に寝室を設けて一人で寝る事にしていた。
しかしコーギーは、番犬としては中々優秀な犬種で、物音がすると「ワンワン」吠えて走って行く、
取りあえず 不審者には勇敢に噛み付くので 泥棒よけには勇敢な犬なので安心して寝ていられる。
年老いると、妻への用事もなくなり、一人寝の自由を満喫しているのだが、
寝ていて急疾患になる不安もある。
2年前には、脳出血を患い3ヶ月の入院後、奇跡的に身体の後遺症は免れたが、
喋りにくくなり、後遺症だろうか「近くの過去」を忘れるようになった。
「老人性の健忘症よ!認知症(アルツハイマー)じゃないわ」と周りや妻は楽観視するが、
脳の内部が何処か崩壊している気がして、穏やかではない。
医者によると私の頭内には2センチ程の空間が出来ていて、
MRI(磁気診断機)で輪切りにすると黒くカサブタのように映し出される
しかし、脳髄液で満たされている古い病巣に新しい脳が出来る可能性は絶無だそうだ。
最近 寝たときと 起きたときの服装が違っているのに気がついた
私はいつも、パジャマを着て寝る、普通のスタイルなのだが、
朝起きると、セーターを着て、ご丁寧に靴下を履いたまま寝床の中で居るのだ。?
枕元には脱いだパジャマが 畳んで置かれてあった。
着替えた記憶が無いため不思議な気がしていたのだが、
初めは多分夜中、トイレに行くために無意識に着替えたのだろうと思って、気にも留めなかった。
しかし、それがたび重なると、自分の無意識が恐怖に変わってくる。
当たり前だが 夜中は部屋や廊下の電気は消してある。
庭に面した廊下には防犯のためにセンサーライトを設置してあり トイレまではかなり距離がある
案外、広い屋敷「100坪の平屋」なので、曲がりくねった廊下を 懐中ライトも持たず
手探りで真暗闇を、私が歩いているとは思えなかった。
水温む季節とはいえ4月の夜はまだ肌寒かった。
私はたんに、部屋で着替えをしているだけなのだろうか?
と考えたが何の目的で夜中に起きて着替えをするのか 判らなかった。
ある日!
「昨日の夜中に、外へ出掛けて、何処へ行ったの?」
妻に聴かれて言葉に詰まった。
記憶が無いのだ。
「そ、倉庫に忘れ物が有ってね、トラックの中に書類を探しに行っていたのだよ」
私の仕事倉庫は、300m程離れた道縁に建ててあり、いつもは車を其処に入れてから自宅まで歩いて帰っていた。
「犬がワンワン吠えて玄関に走るから泥棒かと思ったわ、なにも着替えてまでして 夜中に取りに行かなくちゃいけない書類だったの?」
「そうだね!大事な書類だったから用心のため 持って帰ったのだ」
「あなたって変よ?、私に気付いたはずなのに、何も喋らず、自分の部屋に帰って行く姿は、まるで亡霊みたいだったわ!」
妻は浮気を疑っている様子ではなかったが 私に不気味さを感じている様子だった
どうも俺は夜中に着替えて外を夢遊病のように歩いて、何処かへ行っているらしい。
無意識で車の往来する道をスタスタ歩く事実に恐怖を覚えた私は、仕方なく事実を妻に話す事にした。
「その記憶がないんだよ」
妻は不審に思い 半信半疑だったが、「同じ部屋で寝ましょう!」と提案した。
私にも反対する理由がないので、症状が安定するまで同宿することにした。
その夜、家内の悲鳴で、われに還った
「キャー何するの! 火事で家を燃やすツモリ???」
私は肩を力一杯引き戻された。
私は空のヤカンをコンロにかけて 底を真っ赤に焼いていた?
ヤカンに水をかけると 白い水蒸気が上がって「ジュー」と音がした
危ないところだった 私を不審に思った家内が夜中に起きてきて見つけていなかったら、死体が二つ転がっていたところだった
すぐに記憶を辿って見るのだが、記憶の淵はすっぱり切れていて、谷底のような暗黒が広がっているだけだった。
何をしていたのか?さえ思い出せないのだ。
次の日 無理矢理手を曳かれて 丸亀にある一番大きな病院の精神科を訪ねた
医者はまだ若い医師で少し不安になったが にっこり笑って親切そうに聞いてきた
「どうなさいました 」
「実は夜中に無意識で行動しているのがわかりまして 夢遊病じゃないかと思うのでまいりました」
「そうですか しかし夢遊病は貴方のような年配の方には珍しい病気なのですよ
これは、「睡眠時遊行症」と呼ばれます。
子供によく見られ、5~12歳の子供では、10~15%が睡眠時遊行の経験があります
症状は30秒~30分程度で、通常は、一晩に一度しか起こりません
睡眠時遊行症は、眠りが深いときに生じます。
深い眠りにあるときに寝返りをうつと、脳が完全には目覚めない状態で、
もうろうとして起きあがったり歩き回ったりするのです。
目は大きく見開かれて言葉を発することもありますが、本人は非常に深い眠りにあります。
そのため、まわりの人が起こそうとしてもなかなか起こすことはできません。
また、本人も、翌日にはこの記憶がありません。
此処のところが 貴方と違います すぐに我に帰るのですからレム催眠(浅い眠り)で症状がでているのです
夢遊病の原因は、脳の一部がまだ未発達なために起こると考えられていて、
脳が成長を終えたときに自然に症状は出なくなります。」
「では先生私は夢遊病ではないのですか?」
「子供の夢遊病は自然治癒するので医療行為の必要はないのですが、
貴方の異常行動は浅い眠りで発症していて記憶がない?
ようするに夢として思い出せないのは重症です。
例えば、おねしょをした時などは自分の行動を夢で覚えていて ちゃんと便所に行った夢を見ます
貴方の場合 脳に何か異常があると考えられます」
多分精神疾患ではなくて、脳神経科の診察を受けられた方が良いと思いますよ」
医師は原因の特定ができなかったらしく 睡眠導入剤と精神安定剤をくれただけで 病院を後にした
私の異常行動は、浅い眠り(夢を見ている状態)から深い眠りに移行して、
脳が完全に休止状態に入った後、私の脳に換わって指令を送る者?物?が、頭に住んでいるのかも?
・・・・・・知れない?
昼間の日常生活は変わりないのだが、最近肩がこるのと、物忘れが多くなった。
「アルツハイマーの前兆だろうか?」古い過去は憶えているのに、朝ごはんのオカズが思い出せない
人の名前が憶えられなくなってきた
私は半年に一回、脳外科の診察を受けているので、CTを撮って貰う事にした
明日診察日の夜、妻と細いロープで繋がって寝ていると、頭の中で音がする?
頭蓋骨を伝わって三半規管を揺るがす音がする。
まるで頭のテッペンを誰かが歩いているのだ?
それと、朝起きた時に、やたらと咽が渇いていて、水を飲みたがる
「糖尿病?」不安がよぎる。
たしか2週間程前、胃が痛くなった。
単なる胃潰瘍かと思い市販の胃薬を飲んだら、治ったのだが、次の朝トイレに行くと、血の固まりみたいな黒褐色の便が出たのを記憶していた。
その、次の日は肝臓あたりに違和感があった。
でも、便は正常に戻り、肝臓の血液検査でGTPやGOTの異常はなかった。
そして、この現象が始まった。
私は初めて神に祈った
「私を狂人にしないでください、神が死神を遣わすなら、せめて原因を教えてください、そして人として神のもとに召してください」